ロマンス@南国
第6章
     6
 あたしはウエイトレスの手で持ってこられたモーニングに付いているコーヒーにミルクと砂糖を入れ、啜った。


 コーヒーが絶好の起爆剤となって、あたしの一日が始まるのだ。


 あたしは目の前でトーストを指で割いて、口へと持っていっている喬を見ながら、


「新宿って結構騒々しいでしょ?」


 と言ってみた。


 あたしがいた頃とまた違っていると思ったからだ。


 あたしが今いる六本木の街も若者の街とあってか、夜はかなり喧(やかま)しい。


 ただ、あたしは都会地特有の雑音にすっかり慣れきっていた。


 秋田の実家は山奥で、確かに静かだ。


 それに故郷を想うことも間々(まま)ある。


 だが、あたしは帰りたいとは思わなかった。


 あたしは上京してきたときに、すでにある程度決め込んでいたのだ。
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