ロマンス@南国
 店の出入り口にあるレジで食事代を清算してもらい、あたしたちは外へと出る。


 二月とあってか、外は日差しがうららかで、あたしは日に照らされながらゆっくりと歩き出す。


 通りであたしが手を挙げ、タクシーを一台拾った。


 先に喬が乗り込み、あたしも追って乗ると、


「ドライバーにあなたの新宿の部屋の住所告げて」


 と言った。


 言わずもがなで、あたしは喬の部屋までタクシーで行くつもりでいる。


 使いきれないぐらいの金を持っている銀座のクラブのママにとって、移動手段に電車やバスなどは必要ない。


 使う交通機関は飛行機か新幹線、それにタクシーぐらいなものだ。


 あたしたち二人が乗ったタクシーは一般道をひた走り、新宿の外れにある喬の部屋へと向かう。


 彼の部屋は新宿でもかなり外れた場所にあり、1Kだった。

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