ロマンス@南国
 辺り一帯にアパートやマンションが犇(ひしめ)いていて、住人皆にしっかりとした生活感がある場所だ。


 あたしは部屋の前まで来ると、二万円近いタクシー代を支払い、ゆっくりと歩き出す。


 彼の部屋は十階建てのマンションの七階にあるらしい。


 705号室が喬の部屋で、行くにはエレベーターか階段を使わないといけない。


 あたしはさすがに七階まで階段を使うのは大いに躊躇われたので、エレベーターで行くことにした。


「乗って」


 喬がそう言い、オープンボタンを押しっぱなしにしたので、あたしが乗り込み、ボックスはゆっくりと上昇していく。


 あたしたちは誰も乗り込んでこないのをいいことに、エレベーター内でキスし合った。


 唇同士を重ね合わせて、互いの体にある温度を感じ取るディープキスだ。


 あたしと喬は口付け合いながら、ボックスが七階に着くのをじっと待つ。


 そしてエレベーターは目的階に着いた。

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