ロマンス@南国
 彼は何も言わなかった。


 ただ、コクリと頷き、店の目立たない場所にあるロッカールームで着替えをするため、奥へと入っていく。
 

 あたしはその後ろ姿を見ながら思っていた。


“この子、きっとセックスも上手いわ”


 三十代後半で、おまけに結婚歴が一度もない独身のあたしは、どうしても男遊びがしたくて、自分の店を空けるときは、副店長とでも言うべき岡島渚に任せ、出かけていた。


 渚はあたしより一回りぐらい若い。


 だが、年若いにも拘(かかわ)らず、頼りになる存在だ。


 そしてあたしは二週間に一度ぐらいはルイに通い、喬とお酒を飲んで、その後、ホテルに泊まり、セックスしていた。


 あたしと喬は実に馬が合っている。


 一緒にいて違和感など全くなく、二人で過ごしながら十分楽しんでいた。


 会えない日は必ずと言っていいほど、あたしのケータイにメールが入ってくる。

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