ロマンス@南国
 <どうしてる?>というのが喬がメール冒頭で使う常套(じょうとう)文句だった。


 あたしは六本木の自宅マンションに帰るタクシーの中でそれを読みながら、彼のことが気になって、車が着くまでにちゃんと返信もしている。


 あたしと喬は付き合い出してから一年が経ち、互いの体も心の状態も知り尽くしていた。


「南の島に旅行にでも行かない?」


 去年末にそう切り出したのはあたしだった。


「いいの?お店」


「うん。あたしがいない間は渚ちゃんが回してくれるから」


「そう」


 喬が頷き、あたしたちは旅行に行く心の準備が整った。


 飛行機の往復のチケットとホテルを取ったのはあたしで、喬は出発当日の午前十一時過ぎ、待ち合わせ場所である成田空港のロビーで待っていた。


 そして、あたしたちの季節外れのバカンスは始まったのだ。


 真冬に夏のような場所に行くのは幾分違和感があったが、慣れてしまえば何ともない。
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