ロマンス@南国
 店のレジであたしが彼に代わり食事代を清算する。


 あたしは普段から金離れが相当いい。


 銀座で生きている人間にとって、お金は実に大量にあるのだ。


 財布の中には万札がジャラジャラ入っている。


 新宿と銀座じゃ、同じ繁華街でも大違いだ。


 喬が一晩掛けて稼ぐ金を、あたしは一時間で稼いでしまう。


 あたしの店はそれだけ流行っているのだった。


 ホステスも絶えず入れ替えている。


 指名が少ない子には辞めてもらうように、こちらが暗黙のうちに促したりもしていた。


 確かに店から辞めさせられるというのは、あまりいい気はしないだろう。


 それにあたしも心を鬼にすることがあった。


 あたしは銀座の水を二十年以上飲み続けている。


 ヒラのホステス時代だって、嫌がらせのようなことをされた過去があった。
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