ロマンス@南国
 ただ、人間というのは過酷な状況に置かれると、自然と耐性が付いてしまうものらしい。


 あたしは同僚ホステスから嫌味を言われたり、陰湿なことをされるたびに、心の中で嫌な感情を処理する能力を付けつつあった。


 つまりあたしはいつの間にか、単なるか弱い女の子ではなく、強い女性になってしまったのだ。


 ちなみに、あたしは秋田にある実家にはほとんど電話していないし、連絡を取っていないから、あっちがどうしてるかほとんど知らない。


 兄夫婦や甥、姪たちもあたしが東京で何をしているのか知らないし、実際知ったら驚くと思う。


 あたしが銀座でクラブをやっていると聞くだけで、多分引いてしまうだろう。


 ただ、あたしは兄にも義理の姉にも、お金を無心したことは一度もない。


 それだけあたしは東京で生き抜いていく力が付いていて、心配事らしい心配がないのだ。


 それにあたし自身、今更実家に戻ってどうのこうのというつもりはなかった。


 どうせ向こう三軒両隣の世界である。


 何を噂されるか、怖くて堪ったもんじゃない。
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