ロマンス@南国
 これは人間誰しもが加齢すれば必ず経験することである。


 一つが三千円ぐらいする芸能人ご用達の高級ロールケーキと、スーパーで売っている一個百円のまんじゅうとはまるで違う。
 

 あたしは先代の銀座の大ママで、すでに他界していた実橋(さねはし)郁子から会うたびに言われていた、銀座で生き抜いていくための半ば教訓に近いことを思い出しながら、毎晩店を開け続けている。


 そんなことを思い起こしながら、あたしはさっき銜え込んでいた喬のペニスが自分の膣中に挿入されたことを確認して、最初は前後に、そして上下に腰を振った。


 あたしは喬と交わりながら思う。


「今夜も熱くなるわね」と。


 部屋から外の景色が見える。


 湾内に停泊する多数の豪華客船が綺麗にライトアップされ、光を解き放ち続けている様が、あたしの目に焼きつく。


 あたしと喬は抱き合いながら、その夜を過ごしていた。


 葛藤はない。


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