ロマンス@南国
 話をすればあたしの病気も理解してくれるかもしれない。


 ただ、余計な心配を掛けたくないと思って、あたしの方が遠慮していた。


 それにあたしはこうも考えていた。


「喬が神経をすり減らすようなこと、しちゃいけないわね」と。


 あたしはいくら恋人が病気を理解してくれると言っても、話すつもりは全くない。


 やはりあたしの精神の根底には、パートナーに心配を掛けたくないという気持ちがあるのだ。


 そしていくらあたしと喬が籍を入れたり、結婚したりしないにしても、上手に付き合っていけるだけの準備が必要なのだった。


 人間は親や兄弟、恋人に対しても話せないような悩み事を抱え込む場合があるのだ。


 そういったときは案外赤の他人が頼りになる。


 あたしは島のホテルで喬と寝乱れたにしても、寝物語で自分の精神不安定な状況や、軽い不眠症の症状を訴えなかった。


 あたし自身、このことは隠しておこうと思っていたからだ。

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