ロマンス@南国
 喬がそれに目で応える。


 互いにばっちりと気持ちが合っている証拠だ。


 あたしたちは誘い合わせ、部屋を出た。


 さっきすでにモーニングコーヒーは飲んでいて、気分が変わっている。


 あたしは喬と手を繋いで歩く。


 彼の髪からは相変わらずスタイリングムースの芳香が漂っていて、あたしを虜にする。


 喬にとって香りの成分が入っている整髪剤は、香水代わりなのだった。


 あたしたちはエレベーターホールへと歩いていき、佇むと深呼吸する。


 これから島の土産物市場で買い物するつもりでいるのだ。


 どのぐらいの量買うかは分からないのだが、あたしは自分の店のホステスの子達に軽いプレゼントをしようと思っていた。


 ささやかだが、幾分値が張るような――、そんな買い物をしようと考える。


 喬は別に旅行に来ても、土産物などにはほとんど興味がないらしい。

< 97 / 119 >

この作品をシェア

pagetop