ロマンス@南国
 元々、彼は人間関係に関して淡白なのだった。


 自分の勤めるホストクラブ内では毎晩熾烈な指名競争があっていたし、同僚ホストに対して、金を掛けてまでものを買ってやる必要など更々(さらさら)ないらしい。


 考えてみれば、あたしも昔、銀座で元いたクラブアイルヲでは、ママの大貫玲子から散々苛められたのだった。


 当時のあたしの心境が今の喬の思惑と一致しているのかもしれない。


 それだけ喬もルイの中ではいろいろと揉めていて、下手すると嫌がらせに近いことまでされているらしい。


 だが、それは自然なのだった。


 何せ、喬はホストクラブでいうヘルプ――いわば、会社などでは一番下の身から這い上がってきて、今店にいられるのだ。


 当然ながら、同僚ホストからはいろんなことをされるだろう。


 明らかに嫉妬というのを通り越しているのは頷ける。


 そして喬はそんなことをされて、居場所がないような思いをしながらも、しっかりと働いているのだった。

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