<短編>美しいさよならをしましょう
「じゃあ、帰るわね。」
その言葉を放つと、
シーツを被っていたあなたがベットから起き上がりわたしの腕を掴んだ。
「なにしてるの?
……放して。」
あなたが掴んだ腕を見て
あなたの顔に視線をやる。
……え?
「何?その顔?」
思わず口をついて出た言葉。
あなたは今にも泣きそうな顔をしていた。
行かないで。
きっとあなたはこの一言が言いたいのだろう。
でも
言えない、ということはわたしも分かっている。
だって
わたしには戻る場所があるから。
それを知ってるからこそ、わたしもこの割り切った関係を継続できているのだろう。
…ずるい女。
どれだけこの子を利用すれば気が済むのだろう。
さみしい、という隙間を埋めてくれるあなたを。