<短編>美しいさよならをしましょう
車に乗りエンジンをつけアクセルを踏み発進させると、急に冷静になることができた。
なんでわたし
あんなこと言ってしまったんだろう…
馬鹿みたい。
現実に起こることは、想像したものと全く違うものだった。
あんなに頭の中で想像したのに…
焦ってしまった自分がいた。
かばんの中で
携帯のバイブが震えている音が聞こえる。
携帯をひらき、画面を見てみると、
さっきまで同じ部屋にいた和幸からの着信だった。
もう終わったことなのよ。
携帯を閉じ、
何事もなかったような顔をして
家で待っているだろう子供を想いながら
わたしは家に向かう。
そう、わたしが忘れられれば何もなかったことにできる。
この2年間の和幸との関係を。
わたしは頬を伝うなにかに気付かないふりをした。