マチルダ
人形と親友
「ミシェル、新しいお人形を買ってきたよ」
髭を伸ばした低い声の紳士が言った。
「もうお人形いらない。お部屋にたくさんあるんですもの。あきたわ」
大きなリボンの髪飾りを付けた少女はつん、として言った。
少女の着るドレスは、親の溺愛ぶりがよく分かる。
「次のはね、クマさんやウサギさんじゃないんだよミシェル」
「あら、どういうこと?お父様」
「こっちにおいで」
少女の父と思われる紳士は、そっと手招きしてある部屋のドアを開けた。
そこには、
「お父様…これ私にくださるの?」
「あぁ。もちろんだよ」
「お父様、大好き!」
少女は父親にしがみついた。