キミが大好きだから〜陽菜へ〜
#1 キミとの出会いは
メガネの裏
ブ〜ブ〜ブ〜…
鳴りだした携帯の音を無視して、鞄から黒ブチメガネを取り出した。
ちょっと見えにくいけど仕方がない。
「haru〜、やっぱり遊びに行こうよ〜」
車のハンドルを握る女の甘い声がなんか気持ち悪くて、俺は窓の外をむいたまま何も答えない。
「ねぇってば、haru…」
「ここでいい。停めて」
女の声を遮って、車を停めさせ、ドアを開ける。
「haru!?」
なんか、怒ってるけど…
「サンキュ。助かった。また連絡するから」
女の頬に軽くキスをしてやると、
だいたいは…
「待ってるからね!」
ほら、全部チャラにしてくれるんだ。
去って行く車を笑顔で見送りながら、俺は今の女の名前がなんだったかとぼんやり考えていた。