キミが大好きだから〜陽菜へ〜

校門で待つ紺野の乗ったタクシーが見えた。



「ごめん。ありがと」


「もういいのか?」



ここに何をしに来たのか、なんて聞かないそれは紺野の優しさ。



「あぁ。さ、黒田のおっさんの顔でも見に行くか」


「お前なぁ・・・」



呆れつつ、運転手に行き先を告げる紺野の横で、



何気なく見た車のサイドミラーに移る車の影。



女性が車のドアを開いている。





ドクンッ!



胸がひとはねした。



なんとなく、でも忘れることが出来ない面影。



陽菜・・・?



車が動き出し、俺は後ろを見るけど、もうその姿を見ることは出来なかった。



もしかして・・・陽菜?



・・・・ははっ、まさか。



きっとあの場所に行ってきたばかりで、俺の感覚も変にナーバスになってるんだろう。




俺はまだ少し打ち続ける鼓動をごまかすように、



深く深く車のシートに体を預けた。








< 321 / 412 >

この作品をシェア

pagetop