キミが大好きだから〜陽菜へ〜
校門で待つ紺野の乗ったタクシーが見えた。
「ごめん。ありがと」
「もういいのか?」
ここに何をしに来たのか、なんて聞かないそれは紺野の優しさ。
「あぁ。さ、黒田のおっさんの顔でも見に行くか」
「お前なぁ・・・」
呆れつつ、運転手に行き先を告げる紺野の横で、
何気なく見た車のサイドミラーに移る車の影。
女性が車のドアを開いている。
ドクンッ!
胸がひとはねした。
なんとなく、でも忘れることが出来ない面影。
陽菜・・・?
車が動き出し、俺は後ろを見るけど、もうその姿を見ることは出来なかった。
もしかして・・・陽菜?
・・・・ははっ、まさか。
きっとあの場所に行ってきたばかりで、俺の感覚も変にナーバスになってるんだろう。
俺はまだ少し打ち続ける鼓動をごまかすように、
深く深く車のシートに体を預けた。