キミが大好きだから〜陽菜へ〜

多分一人でこっちにいると思い出すことが多すぎて、



俺はただがむしゃらに昔自分の作った曲をピアノでなぞったりして時間をただつぶしていた。



「haru、そろそろ行くぞ」



紺野に促されて向かったのは、あるホテルの一室。



数日後にある例の「密着取材」の打ち合わせ。



やっぱり「密着」と言ってもNGなとことかあるわけで。



それの確認らしいけど。



部屋に向かいながら紺野がメモを見て読み上げる会社の名前に覚えはなくて。



「こんなの社長がよく許したよな」


おっさんは、あまりアーティストのプライバシーに触れないようにいままで営業していたはずだ。



「あぁ。割と新しい会社なんだが、結構筋が通ってるらしくって、社長もお気に入りらしいんだ。あと・・・会社の方針も前とは少し変わってきてるしな」



言いよどんだ口先は、きっとカズマのことを指してるのかもしれないな、と思いつつ、俺は何も言わずに紺野の後に続いた。



紺野がドアに手をかける。


俺は大きく息を吸い込んだ。



さぁ。



haruになれ。




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