キミが大好きだから〜陽菜へ〜

その後、ほどなくして戻ってきた紺野を見て、俺はすぐに席を立った。



ドアを開ける。



ガチャン。



ドアが閉まった瞬間。



目から涙がとめどもなくあふれてくるのをとめることが出来なかった。



そんな俺を紺野は人気のない階段のほうにひっぱっていった。



足がまるで雲の上を歩いているようにふわふわしていて、



俺は軽く嗚咽をしながら階段の手すりにもたれた。




陽菜!


思い出なんかじゃなかったんだ。


思い出なんかじゃない。





陽菜、気づいてないんだろ?


それは俺と過ごしたあの時間の証なんだぞ。


仕事の話を嬉しそうにする陽菜の表情がまぶたの裏に鮮やかによみがえる。





陽菜、気づいてないんだろ?


その左手に入ってたお前の大事なもの。


今は、俺のこの胸にぶら下がる・・・このリング。




・・・俺は、気づいたよ。


今でも、あの頃と同じ気持ちのままだって。

そして、今この瞬間も君を大スキなんだって・・・。













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