キミが大好きだから〜陽菜へ〜
仮面
会社のいつものスタジオで、動かない時間と、動いている時間をぼんやりしながら感じている時に、響いたノックの音。
「はい・・・」
「ハルト、久しぶりだな」
覗いた顔はカズマだった。
「どうだ、帰ってきて」
当たり障りのない会話。
けど、きっと紺野からもう伝わってるはず。
言わないなら俺から言うよ。
「あいつに・・・会ったよ」
瞬間カズマの表情から笑みが消えた。
「あぁ。紺野から聞いた」
「お前も知らなかったのか?」
「知ってたら断ってたよ」
昔のカズマからは想像できないような冷たい言い方に思わず俺は言葉をのんだ。
「あいつは今のところ体調はいい。けど、時々ボーっとすることもあって、その後たいてい調子が悪くなるんだ」
それは、記憶のフラッシュバックが起こっているせいなのかどうかわからない、とカズマは言ってから、
「けど、今回の仕事は全くの予想外だったよ。次の回、陽菜だけ抜いてくれ、というのも不自然だからお前はそのまま仕事を受けろ。ただし!余計なことは言わないでくれ」