キミが大好きだから〜陽菜へ〜
「花火・・・」
「売ってるとこなくてな、苦労した」
「冬だよ?カズくん・・・」
胸がつまる。
花火にはすごく思い出が詰まってるから。
大好きなパパとママとの思い出。
カズくんへの淡い初恋。
程なく火をつけられた花火は勢いよく冬の夜空の下、光をはじき出す。
私達は、それぞれ何も言わずに花火をただ黙ってみてた。
残り最後のほうになったときに、
カズくんは、
「陽菜・・・ごめんな。俺さ、お前の体を守ることに必死で、お前の気持ちとか全然無視してた。てか・・・無視したかったんだ」
ううん。
首を振る私を見ないで花火の光を見つめたまま、カズくんはつぶやいたんだ。
「陽菜・・・幸せになれよ」
私は、涙を抑えることが出来ずに、花火の火もつけないまま、顔を手で覆った。
カズくんは、自分の持つ花火の火が少しずつ小さくなり、そしてそれが消えてからもしばらくそれを見つめて黙ってから、腰を上げた。
「よし!まだあるけど、残りはお前らにやる!」
思わず見上げた私の頭をぽんぽんと叩いて、彼は一瞬だけ切なそうな表情をしてから、にこっと笑って
「俺はいつでもお前のお兄ちゃんだから。それは忘れるなよ」
と言うんだ。
カズくん、本当にありがとう・・・。