キミが大好きだから〜陽菜へ〜

「花火・・・」


「売ってるとこなくてな、苦労した」


「冬だよ?カズくん・・・」


胸がつまる。



花火にはすごく思い出が詰まってるから。


大好きなパパとママとの思い出。



カズくんへの淡い初恋。



程なく火をつけられた花火は勢いよく冬の夜空の下、光をはじき出す。



私達は、それぞれ何も言わずに花火をただ黙ってみてた。



残り最後のほうになったときに、


カズくんは、


「陽菜・・・ごめんな。俺さ、お前の体を守ることに必死で、お前の気持ちとか全然無視してた。てか・・・無視したかったんだ」


ううん。

首を振る私を見ないで花火の光を見つめたまま、カズくんはつぶやいたんだ。



「陽菜・・・幸せになれよ」



私は、涙を抑えることが出来ずに、花火の火もつけないまま、顔を手で覆った。


カズくんは、自分の持つ花火の火が少しずつ小さくなり、そしてそれが消えてからもしばらくそれを見つめて黙ってから、腰を上げた。



「よし!まだあるけど、残りはお前らにやる!」



思わず見上げた私の頭をぽんぽんと叩いて、彼は一瞬だけ切なそうな表情をしてから、にこっと笑って



「俺はいつでもお前のお兄ちゃんだから。それは忘れるなよ」



と言うんだ。


カズくん、本当にありがとう・・・。






< 406 / 412 >

この作品をシェア

pagetop