キミが大好きだから〜陽菜へ〜
俺はバスローブを羽織り、そのまま寝室のサイドボードの引き出しに入ってた一枚の写真を手に取った。


そこには怒ったようにこっちをみてる俺がいる。


ちょうどこの世界に入ってきた頃の写真。



初めてゆぅさんが俺を撮ってくれた写真。



ゆぅさん…。



俺の恩人。



ゆぅさんに出会っていなかったら、と思うとぞっとすることもある。



ただのらりくらりと遊んでるだけの俺に


一生かけられるような夢を見つけることの大切さ。


そして君には音楽の才能がある!と断言してくれた。

その時は少しキモいおっさんだな、としか思ってなかったけど、会ううち、話すうちにどんどん引き込まれて行くのがわかった。



でもその何年か後にゆぅさんは事故で死んでしまった…。



事故の話を聞いてから、
ゆぅさんが死んだ、って聞いてから、


俺はなんだか裏切られたような、悔しいような悲しいような…とにかく信じたくなかったんだ。



葬式にも出なかったし、あれからなるべく思い出さないようにしてた。



ガキだったんだな、俺も。
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