紺碧の地図
彼は、まじまじと私を見て、口元に手を添えながら言った。
「…へぇ。人魚って、本当にいるんだな」
「信じてなかった?」
私の問いに、彼はすぐに頷いた。
「見たことないし。…足、あるんだ」
「あ、うん。18になるとね、人間の足になれるの。海に入れば、尾ひれになるよ」
話を聞いてくれていることが嬉しくて、私はペラペラと話し続ける。
「私、今日誕生日で、早く"人間"を体験してみたくて。海から上がったところを、さっきの海賊に見つかっちゃって…」
そこで、私は口をつぐんだ。
つい喋り始めちゃったけど…彼、仏頂面だ。
「ご、ごめんなさい!どうでもいいよねっ」
「…何で?興味あるけど」
へ?と顔を上げると、微かに口角をあげる彼。