紺碧の地図
…違うだろ。
俺から見て、あんたは。
自分の為に、炎を消そうとしているように思えるんだ。
「…そう」
けど俺は、思ったことを口に出そうとはしなかった。
大体は、想像がついた。
過去の記憶に、結びついている気がしたんだ。
「…ありがとう、ゼン」
ポツリとそう呟くと、ララは苦笑した。
俺はその悲しげな表情を、ただ見つめて、
「…礼言われるようなこと言ってないけど」
そう、答えることしか出来ない。
人の過去は、決して鮮やかな記憶だけじゃない。
塗りつぶしてしまいたい記憶だってあるんだ。
…その記憶を、蘇らせようとすることほど、残酷なモノはない。
俺とララはその時、炎に包まれた小さな店の消火を手伝っていた。
木造のその店は、所々が崩れ落ち、今すぐにでも崩壊しそうなくらい脆くなっていた。