紺碧の地図
「―――っ…」
何でゼンがお礼を言うの?とか。
やっと名前で呼んでくれたね!とか。
…言いたいことはたくさん、たくさんあったのに。
その全てを呑み込んで、言葉に出来なくなるくらい…ゼンの笑顔に吸い込まれてしまった。
私は真っ赤に染まった頬を、涙を拭うフリをして隠した。
ゼンは…ときどき、心臓に悪い。
土砂降りだった雨は、役目を終えたと悟ったのか、少しずつ弱まっていった。
「…レキ、よろしく」
「あっ!? うん、レキね!」
ゼンに促され、私は勢いよく立ち上がると、
「………」
ちらっとゼンを見て、さっきの言葉に何て返そうか悩んだあげく。
―――何も言わずに、笑った。
そしてすぐに、レキを探しに駆け出した。