紺碧の地図

「………」


暫くの沈黙。


何ともいえない緊張が、事情を知っている私たちの間に流れた。



「…うん。大丈夫ね」



一人の女の人が満面の笑みでそう言い、ブローチをゼンに渡した。


ゼンはそのブローチを静かに受け取ると、ちらりと私とニーナに視線を向けた。


私はゼンに笑いかけたあと、小声でニーナに話しかけた。


「…よかったねっ」


「…問題は、あっちよね…」


ニーナの困ったような視線の先には…がっちがちに緊張しているレキの姿。



唇を真一文字に結んで、冷や汗が額を伝っている。


いつものおどけた感じは、どこにいっちゃったんだろう。



…とにかく、普通にしてれば女の子に見えるのに、今のレキはどこか怪しい。


「…あなた、具合悪そうよ?大丈夫?」


そう声をかけられたレキは、びくんと反応した。



< 122 / 545 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop