紺碧の地図

「俺っ…」


「近くの海岸で倒れていたのを、私が見つけたんです」


レイル姫は、笑顔で俺にカップを渡しながらそう言った。


俺は短くお礼を言ってカップを受け取ると、遠慮がちに訊ねた。


「あの…俺がここにいることは…?」


俺の問いに、レイル姫は首を横に振った。


「私しか知りません。誰にも見つからないように、運びましたから」


…そりゃそうだよな。


男禁止なんだから、見つかったら大騒ぎだろうな。


「何か…すみません」


俺が軽く頭を下げると、くすくすと聞こえた笑い声。


「…いいんです。放っておくことなんて、出来なかったんですから」


顔を上げ、俺が何かを言おうと口を開いた―――その時。



「レイル姫様。お食事の時間です」



扉を叩く音と、扉の向こうから聞こえた声。


俺とレイル姫は、びくんと肩を震わせた。



―――まずい。



< 132 / 545 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop