紺碧の地図

「―――っ」


俺は急いでベッドから降りると、窓辺に近寄った。


幸い、この部屋は一階にあった。


これなら何とか、逃げ出せそうだ。


「俺、もう行きます」


窓の鍵を外し、窓枠に手を掛けた。


「…あのっ…!」


レイル姫に呼び止められ、俺は少しだけ振り返り、笑った。


「俺、ロシュっていいます。ありがとうございました…レイル姫」


返ってきたのは…最高の笑顔。


「気をつけて下さいね」


その言葉を最後に聞き、俺は窓から飛び降りた。


そのまま、後ろを振り返ることなく走った。



高鳴る心臓の音が、鳴り止むことはなかったんだ。





―――――…


「…あの時の、最後に見た笑顔が…頭に焼き付いて離れないんだ」


語り終えたロシュのその表情から、本当にレイル姫が好きなんだな、って思った。


女装までして…この国にいるくらいに。




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