紺碧の地図
脳裏に焼け付くあの光景が、瞬時に思い出され、私は不安に胸を押し潰されそうになった。
…そんなわけない。
みんななら大丈夫…!
そんな根拠のない自信を確かめるように、私は拳をぎゅっと握った。
停泊中のQueen号に小舟を寄せ、私たちは船に掛かったままの梯子を、静かに登った。
登りきると、近くの柱に身を隠す。
静まり返っていた空気に、一人の声が響いた。
「…だから!女なんか乗ってないって言ってるだろ!?」
その声に真っ先に反応したのは、ゼンだった。
「…リジェ」
あ…私も知ってる。
リジェは、フォーグのとき、ゼンと連絡を取り合った人。
カツ、カツと靴音が響く。
どうやら、誰かがその場を小さく行き来しているみたいだった。
その靴音が止まると、やけに低い声が聞こえた。
「だから…そう見え透いた嘘をつくなと、何度言ったらわかんだ?」