紺碧の地図
「にやにやなんて、してませんっ!」
「してたって。…お、さんきゅ」
イズラは水を一気に飲み干すと、元通りになりかけている闇市場を見上げた。
「…ありがとな」
「え?」
まさかの言葉に、私は訊き返してしまった。
イズラは面倒くさそうに頭を掻く。
「だーから、ありがとなって言ってんだよ」
何て返せばいいのか迷ってる私の頭に、昨日のゼンの言葉が浮かんだ。
『あんたは本当に、あいつの光になったんだよ』
私…本当に?
「ねぇイズラ。私、イズラの光になれた?」
思わずそう訊くと、イズラが私の頭をぐしゃっと撫でた。
「ちょっ…」
「十分すぎだっての。光が強すぎて目が眩んだし」
悪戯に笑いながら、イズラは頭に巻いていたタオルをほどいた。
そのタオルで汗を拭くと、横目で私を捉える。
「な…何?」
私はぐしゃぐしゃにされた髪を直しながら、そう訊いた。