紺碧の地図
眠気がとれないのか、片手を口元に添え、欠伸を繰り返している。
漆黒の柔らかい髪には、寝癖がついていた。
…そんなゼンの姿に、私は思わず笑いそうになる。
「何、じゃないだろう!この素晴らしい景色を、わたしと見なくてどうする!!」
ゆっくりと近づくゼンに対し、アルザは不満げな声を漏らした。
そんなアルザに、ゼンは顔をしかめた。
「…素晴らしいって、砂漠しかないけど」
「それがいいんだっ!! わかってないな、ゼンは…寝癖がついているぞ」
アルザの小さな手が、ゼンの髪に触れた。
ゼンは眉をひそめながらも、アルザの手が離れるまで、ただ黙っていた。
「…で、何。俺は貴女と、この砂漠を見てればいいの?」
再び舵へと専念し始めたアルザに、ゼンが問いかけた。
その問いかけに、アルザは満面の笑みで答える。
「そうだ!わたしの隣にいてくれれば、それで問題ない」
その会話の一部始終を、私たちは遠くで聞いていた。