紺碧の地図

◆◆◆


「ようこそいらっしゃいました、お客人方」


………うわぁ。


私は今、自分の瞳に映る光景を疑っていた。



人が何百…何千人入るんだろう、というほど広い部屋に、長ーいテーブル。


その上に並べられた、豪華な食事の数々。


そして…恰幅のいい体格に、優しい笑みを浮かべているのは、アルザのお父さん。



つまり…アルフィザ国国王。



まさかの国王様も一緒に食事をするなんて思ってもいなかった私は、落ち着けずにいた。


でも、こんなときでもやっぱりゼンはゼンで。


「…いえ。お気遣いなく」


なんて、いつもの表情でさらりと対応している。


うう。

ゼンの度胸が欲しい…。


「ゼンくんと…ララさんだったかな?遠慮せず、どんどん食べてくれたまえ」


国王様の屈託のない笑顔に、自然と緊張が綻ぶ。


いい人…だなぁ。

この人が、アルザの"お父さん"…。


ちくん、と胸の奥が痛んだ私は、無意識に国王様から視線を逸らした。



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