紺碧の地図

「さっきも、ゼンが言ってたけど。命を懸けるには、それ相応の理由が必要なんだ」


気がつけば、甲板にいるのは、私たち二人だけになっていた。


それでも構わず、私はレキに訊ねる。


「…理由?」


「そう。船長からしてみれば、船員の命預かるわけだし」


レキは視線を横にずらし、果てしなく続く大海原を眺めた。


「理由もなくふらっと立ち入ったやつの命を背負う程、船長は絶対の存在じゃないんだな、これが」


吹き抜ける風が、レキの表情を悲しげに揺らした。


けど、すぐにその表情を隠すかのように、レキはニカッと笑う。


「だから、船長が認めたやつじゃないと船には乗れないってわけ!」


「認め…られたのかな、私」


迷惑だとも、邪魔だとも言われたけど。


「ゼンが乗っていいっつったんだから、平気だって」



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