紺碧の地図
お頭は、そんな私を物珍しそうに眺めた。
「…何だ?お嬢ちゃん、メイドか何かか?」
…怖くない。
怖くなんかない。
盗賊ぐらいに立ち向かえなくて、私に海賊の船に乗る資格なんかない。
今ここでアルザを護れるのは、私しかいないの。
「…アルザ」
小声でアルザの名前を呼ぶと、私は前を見据えたまま続ける。
「私が…時間稼ぐから。アルザは上手く逃げて」
アルザが息を呑む音が聞こえた。
…大丈夫。
アルザのすばしっこさなら、きっと。
私はゆっくりと、アランとシーザの近くへ歩き出した。
床に転がっていた、どちらのものかわからない剣を拾い上げる。
「…お嬢ちゃんまさか、俺とやろうってのか?」
バカにしたような声に、私はただ笑みを返した。
…ねぇ、ゼン。
こんな私を、あなたは笑うかな?
それとも、よくやった、って褒めてくれる?