紺碧の地図
キィン、と一際大きな音が響いた。
何度瞬きを繰り返しても、私の目の前にいるのは…紛れもなく、ゼン。
「…ったく、邪魔すんなよ。誰だお前」
眉間にシワを刻みながら、お頭が舌打ちと共にゼンに言った。
「…ただの海賊だ」
「へーえ。"ラー"か?…いや、助けに入ったんだから、"ルナ"か」
「…そんなの、どっちだっていい」
互いの剣をぶつけ合ったまま、ゼンとお頭が会話を続ける。
「それに、」
ゼンはそう言うと、素早く体勢を変え、手首を返した。
お頭の手から弾き飛ばされた剣は、主人を失い、静かに地面に落下した。
お頭は今起こった出来事が信じられないのか、目を丸くした。
そんなお頭に、ゼンはゆっくりと剣の切っ先を向けた。
「…邪魔してるのは、あんただろ」
私が見えるのは、ゼンの後ろ姿だけ。
ゼンの表情はわからないけど…でも、わかる。
―――ゼンは、怒ってる。