紺碧の地図
いつもと変わらない声の調子だけど、いつもとどこか違う。
「ゼン…?」
思わず呼んでしまってから、ハッとして口をつぐむ。
戦いの最中に、気を逸らすようなことしちゃダメなのに。
けどゼンは、ゆっくりと振り返った。
どくん、と心臓が脈を打つ。
「―――ゼ…」
「相変わらずだね、あんたは」
ふ、と小さく笑いを零したゼンの瞳は、どこか悲しそうで。
その理由が、私にはわからないのが悔しかった。
ゼンは剣を鞘に収めると、私のさらに後方へ視線を向けた。
「…あとは、任せるよ」
その視線の先を追って振り返ると、小さく縮こまるアルザの横に、
「―――はい」
真剣な表情の、ロイがいた。
ロイはアルザの背中にあてていた手を離し、腰にある剣の柄に手をかける。
「…ロイ…」
涙でくしゃくしゃになった顔で、か細い声で、アルザがロイを呼んだ。