紺碧の地図
◆始まりの風
港町、ウィラ。
「―――――っ…」
息を弾ませながら、私は町中を駆ける。
人気のない裏通りを、ただひたすら。
「………!!」
遠くの方から、叫び声が聞こえた。
けど私は振り返らず、一心に走りつづけた。
夜空の月までも、私を追う。
…今、捕まったらだめ。
そう自分に言い聞かせ、疲れきった脚を必死に動かす。
「………っ、あ」
足元の小石に躓き、派手に地面に転んだ。
…靴を、履いてくればよかった。
足の裏が、焼け付くように痛い。
じわりと滲んだそれは、私の視界を揺らした。
「…何してんの?」
―――どくん。
背後から不意にかけられた声に、心臓が激しく動き出す。
震える体を抑えながら、私はゆっくりと振り返った。