紺碧の地図

「…俺さ、いらない子だったんだよ。両親は俺を、闇市場に売った」


知っている単語が出てきたことに、耳を疑う。


闇市場。

あの場所に、レキが―――…?


「ま、そっから悪夢のような日々が始まったんだ」


心の陰りを隠すように、レキは笑顔を繕う。


「地獄という場所にふさわしい場所は、あそこ以外見当たらなかった。…けど俺は、一筋の光を見た」


レキの瞳が、闇夜を照らす月を映した。


レキは一呼吸置いてから、再び口を開く。


「闇市場に売り出されたあの日、俺を買い取ってくれたのは…このQueen号の元船長、コウさんだ」


「元、船長…?」


元船長ってことは…


「ゼンの、親父さんだよ」


私の考えを読んだかのように、レキが言い加えた。


…ゼンのお父さんが、レキを買い取った…?


「コウさんは、あの日売り出された子供を、みんな高額で買い取り、自由を与えてくれた」


その日のことを思い出しているのか、レキの表情が和らぐ。



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