紺碧の地図
「俺はその時点で、あの人についていくって決めたんだ。コウさんは、俺の光だった」
レキは再び視線を落とすと、どこまでも深く続く海を見下ろす。
「…その光はもう、海の底に沈んだけどな」
胸が、きゅうっと締め付けられるような気がした。
レキの姿と、いつの日かのゼンの姿が重なって見えた。
二人とも、悲しい瞳で…ひたすら真っ直ぐに遠くを見つめるんだ。
「…ララちゃん、ゼンからコウさんのことは?」
「え?…ううん、何も聞いてない」
私が首を横に振ると、レキは「そっか」と短く呟いた。
「…じゃあ、俺の口から言えることじゃない」
ごめんねと謝るレキに、私は何も言えなかった。
…知りたい。
けど、訊けない。
ゼンに訊くことなんてできない。
あの日…ゼンと出逢った、あの夜。
私の"約束"を話すときに、ゼンのことを訊こうと決めた。
けどね、ダメなの。
あの約束を口にすることが…今の私にはできない。