紺碧の地図
ゼンの言いたいことは、わかった。
私の命を護れる保証はないから、船に乗るに値する理由がないなら、船から降りろ、って。
そう言いたいんでしょ?ゼン。
命を懸ける程の理由がないなら、海よりも安全な陸の上で生きろ、って言いたいんでしょ?
「…理由なら…前に少し言ったよ」
無理やり作った笑顔でそう言うと、ゼンが眉をひそめた。
「…"約束"?」
「うん」
やっぱりゼンは覚えてたみたいで、私は苦笑しながら頷いた。
「…私が家族を失って、最初に辿り着いたのが、ウィラだったの」
港町、ウィラ。
私の…始まりの場所。
「泣いてばっかりの毎日だった。…でもね、ある満月の夜に、一人の男の子に会ったの」
人魚の姿の私を見て、彼は驚いた。
けど私の涙を見てすぐに、彼は優しく笑ったんだ。
「"大丈夫?どうした?"って。その優しさが嬉しくて、私は声を上げて泣いたの」
男の子は、私が泣き止むまで黙ってそばにいてくれた。