紺碧の地図
弱い者を傷つける輩が多いこの世の中で、人の為に命を懸ける父さんの背中は、逞しく見えた。
父さんのあとについて海賊になることに、俺はなんの躊躇いもなかった。
俺の今の目標は、父さんを越えること。
それが出来ないから、今こうして苛立っているわけで。
「…ゼン。どこ行くんだ?」
腰を上げ、無様に砂浜に横たわっていた剣を拾い上げた俺に、父さんが問いかけた。
「…別に。船に戻るだけ」
俺たち…つまり、父さんが率いる海賊船Queen号は、この小さな港に停泊している。
今後の見通しを立てる為と、長旅の休憩も兼ねて、五日間の停泊。
今日はその最終日で、他の船員たちは出航の準備を整えているところだ。
「いつまでも遊んでる船長の代わりに、俺が手伝いに」
敗けた、という事実が悔しくて、皮肉を込めてそう言った俺に、父さんは慌てて口を開いた。
「な!~ゼン!俺はお前の為にだなぁっ…」
「はいはい」
適当にあしらうと、俺は足を進めた。