紺碧の地図
「あーあ、ダメだよ母さん。ゼンを子供扱いしちゃ」
真上から降ってきた声に空を見上げると、俺の目の前に赤が広がった。
それも一瞬で、次の瞬間には俺と母さんの間に、一人の人物がいた。
「こら、サン!高いとこから飛び降りちゃ危ないでしょ!?」
「うわ、俺まで子供扱いしないでよ」
目を奪われるほど、鮮やかな赤髪を揺らし、名前の通り太陽のように笑ったのは、サン…俺の、兄さんだった。
といっても、実際血の繋がりはないんだけれど。
「特にゼンはプライド高いんだからさ。な?ゼン」
「…別に、そんなこと…」
もごもごと口ごもる俺に、サンは「そんなことあるだろ」と苦笑した。
俺とはまるで正反対の、サン。
その髪のせいかもしれないが、サンはどこにいても目立つ存在だった。
そんなサンに出逢ったのは、まだ俺が生まれて間もない頃。
二つ違いのサンは、物心がつく前に両親に捨てられ、そんなサンを見つけた父さんと母さんが引き取ったらしい。