紺碧の地図
◆闇を知った少年
―――…
サンが一人で旅立ってから、早くも一年が過ぎた。
サンからの連絡はない。
でも元気でやっているだろうと、父さんと母さんは笑っていた。
航海も順調に進んでいたある日、Queen号はある街に辿り着いた。
そこで俺たちは―――闇を、見る。
「…人身売買?」
父さんが眉をひそめ、不快な声を出すと、船員の一人が頷いた。
「はい。この奥で、夜な夜な人身売買が行われている、という噂を聞いたことがあります」
全員が足を止めると、指差された方向を見る。
どことなく、暗さが漂うその道に、俺は胸がざわつくのを感じた。
「聞き捨てならないな。…よし、夜になったら行ってみよう」
父さんの提案に、誰一人嫌な顔はしなかった。
「…ゼン」
不意に、父さんが振り返った。
俺は眉をひそめ、次の言葉を待つ。
「お前は船で留守番だ。母さんと一緒にいろ」
「な…」