紺碧の地図

「…何だお前…、俺と、同じ境遇か?」


肩で息をしながら、苦しそうに吐き出されたその言葉に、俺は眉をひそめる。


「…境遇?」


「…はは、違うのか。…幸せだな」


少年は自嘲気味に笑うと、急に咳き込んだ。


「おい…大丈夫か?」


よく見れば、少年の体はひどい傷だらけだった。


その傷ついた腕で、少年は口元を拭った。


「…そんなに見るなよ。自分でつけた、傷だし」


俺が返す言葉を探しているうちに、少年は続けた。


「…こんな傷だらけの体なら…貰い手が見つからないかもしれないだろ?」


笑ったように見えた少年の笑顔は、同時に絶望を背負っているように思えた。


―――人身売買。


その単語が、急に現実味を帯びて頭に響く。


「…お前…」


俺の僅かな声の震えを感じ取ったのか、少年は俺をじっと見てから、口を開いた。


「…知ってんだな。ここで人身売買が行われてること」



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