紺碧の地図

俺が何も言わないのを肯定と受け取ったのか、少年は僅かに微笑んだ。


「…全く、皮肉なもんだよな。両親に売られたんだぜ?俺」


「………っ!」


「地獄だよ、ここは」


…地獄だ。


もう一度そう呟いた少年は、空を仰いだ。


助けを求めているようなその姿に、俺は何もかける言葉が見つからない。


「この近くのはずだ!探せ!!」


先程聞こえてきたような怒声が暗闇に響き、俺は肩を震わせた。


少年は舌打ちをすると、傷だらけの体のまま立ち上がった。


「俺は、逃げる。お前も早く…こんな場所からはいなくなった方がいい」


「………」


俺が呼び止める間もなく、少年は自ら暗闇へと消えた。


「いたぞ!追え!!」


騒がしい音が、少年を追って闇に溶ける。


暗闇が静寂を取り戻すまで、俺はその場を動けなかった。





―――"闇市場"。


そう看板に書かれた建物に着いた時には、深夜を回っていた。



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