紺碧の地図

バタン、と乱暴に閉じられた扉を、俺は立ち止まって見つめた。


「…父さん…」


憧れとか、尊敬とか。


そんなものじゃ追いつかないくらい、父さんは手の届かない所にいた。


それが悔しくて、俺はただ、唇を噛みしめた―――…





窓の外がうっすらと明るくなってきた頃。


「―――ゼン!?」


ぞろぞろと、恐らく買い取った子供たちを連れて、父さんたちが出てきた。


「…お帰り」


「お帰りって…、まさかお前…!?」


あまりに驚いたのか、父さんは口をパクパクさせている。


そんな様子が可笑しくて、俺は苦笑した。


「…俺が大人しく待つと思った?格好良かったよ、父さん」


「~~~っ、」


怒りたいのか、喜びたいのか、どっちつかずの表情を続けた後、父さんは諦めたようにため息をついた。


「…まぁ、見てたなら話は早い。この子たちは、自由にしてあげるんだ」


父さんの後ろにいる、数人の子供たち。



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