紺碧の地図
―――…
遠くで、波の音が聞こえる。
「―――…ン」
規則的に繰り返されるその音は、どこか心地いい。
「―――ン」
出来ればずっとこのまま…
「―――ゼンッ!! 起きろっ!!」
「!?」
耳元で聞こえた大声に、俺は一気に現実に引き戻された。
目の前には、眉間にシワが刻まれたレキの顔。
そして、ここは―――…
「…どこ」
そう。
俺たちは、どこかの部屋にいた。
「俺が聞きてぇよ。目が覚めたら知らないとこにいるし。あー痛ぇ」
レキは不機嫌な顔をしたまま、自分の腕の傷を眺めた。
「…夢じゃ、ないんだよな…」
「………」
その呟きの意味は、訊かなくてもわかった。
夢だったらいいと思った。
けど、あの記憶は。
夢で片付けられるほど、曖昧な記憶じゃない。