紺碧の地図
夜。
港町に停泊を決めた俺たちは、各自が次の航海へ向けて、慌ただしく準備をしていた。
「ゼン。ちょっといい?」
残りの食糧を確認していた俺は、手を止めてニーナを見た。
「…何」
「いいから、ちょっと来て」
無理矢理ニーナに腕を引っ張られ、引きずられるようにして俺は甲板に出た。
「…どうしたの」
ニーナはピタリと足を止めると、振り返って俺を見据えた。
「お姉ちゃんのことだけど」
その真剣な眼差しに、思わず身構えてしまう。
「…クレア?」
「そう。あのねゼン、これはお姉ちゃんに口止めされてることなの」
「………」
「でも、言うわ。ゼンには知る権利がある。…お姉ちゃんの恋人として」
一体何なのかと眉をひそめる俺に、ニーナは一瞬躊躇う素振りを見せた。
けど深呼吸をし、決意したように口を開いた。
「―――お姉ちゃんの命は、もう長くないわ」
静寂が、揺れる。