紺碧の地図
聞き間違えるはずがない。
けど、聞き間違いだと思いたい。
「は…?」
クレアの命が、長くない…?
「お姉ちゃんには軽い発作がある、って言ったわよね。でも違うの。発作は重い病気の一部なのよ」
信じきれていない俺に、ニーナは淡々と真実を告げる。
「医者に宣告されたの。あと数年の命だって。だからあたしたちは、静かなあの島で暮らし始めたのよ」
「………」
「"今"を精一杯生きたい。そう言ったお姉ちゃんの気持ち、わかる?」
ニーナの問いに、言葉が見つからない。
「お姉ちゃん、ゼンに護られる度に言ってた。わたしのあと僅かな命の為に、ゼンが傷つくのが嫌だ、って」
クレアは、そんなことを思っていたのか?
クレアの命を護る為なら、俺はいくら傷ついたって構わないのに。
「…ゼン、お願い」
珍しく弱々しい声音で、ニーナが言った。
「お姉ちゃんにたくさん、愛をあげて」
「ニーナ…」
「たくさん、思い出をあげて」