紺碧の地図

ニーナの瞳は、もう溢れそうなくらいの涙でいっぱいになっていた。


「お姉ちゃん、ゼンといる時が一番幸せそうなの。…だから、いつもそばにいてあげて」


ニーナの頬を、一粒の涙が静かに滑り落ちる。


月に照らされた涙は、綺麗に輝いていた。


「…分かった」


ニーナの背中を擦りながら、俺は小さく頷いた。


俺の大切なものは、どうしていつもなくなってしまうんだろう。


そんな想いを抱きながら、俺は夜空の月を見上げた。



―――月は、微笑んではくれなかった。





それから一週間後。

俺たちはある村に辿り着いた。


そこは、"ラー"に支配された村だった。


「…ひでぇな。あいつら、この村の人間を奴隷のように扱ってやがる」


レキが舌打ちと共にそう言うと、双眼鏡を下ろした。


船を着けたのは、村の裏側。


村の嫌な雰囲気を感じ取った俺たちは、正面を避けて錨を下ろした。



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