紺碧の地図
「わたし、ゼンが思ってるよりも弱くないわ。毎日特訓してるもの」
…それは、分かってる。
クレアが夜な夜なレキの指導の下、剣術を鍛えている姿を、何度も見た。
―――でも。
「…クレアは、船番だ。今回は危険すぎる」
怖いんだ、クレア。
君を失うことが。
あと僅かだという命が、戦いによって消えてしまうことが…どうしても嫌なんだ。
「…どうして?ゼン」
訴えるような瞳で、クレアはじっと俺を見つめた。
「危険なのは、みんな同じよ。…なのに、どうして?わたしが女だから?」
「違っ…」
「じゃあ、わたしが…ゼンの恋人だから?」
すぐに否定出来なかったのは、それは違うと言い切れる自信がなかったから。
それに…クレアが今まで見せたことのない、苦痛に満ちた表情をしていたから。
「ゼン…わたしは、ゼンに護って欲しくて船に乗ったんじゃないわ」
クレアの言葉が、重く深くのしかかる。